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マンション管理費の滞納者に対する対応について

執筆者の写真: 弁護士 石塚 誠弁護士 石塚 誠

マンション管理費の滞納は、管理組合にとって深刻な問題です。放置すれば、マンションの維持管理に支障をきたし、他の区分所有者の負担増加にもつながりかねません。ここでは、弁護士の立場から、マンション管理費の滞納者に対して管理組合がとりうる法的措置について、区分所有法に留意しつつ解説します。


1. 滞納管理費の請求


* 内容証明郵便による請求: まずは、内容証明郵便で滞納管理費の支払いを督促します。これにより、滞納者に心理的なプレッシャーを与え、支払いを促す効果が期待できます。


2.一般的な措置


* 支払督促: 滞納者が請求に応じないものの、争う可能性が低い場合は、簡易裁判所に支払督促を申し立てます。支払督促は、訴訟よりも簡易な手続きで、迅速な解決が期待できます。


* 訴訟: 滞納者が争う可能性が高い場合は、訴訟を提起します。訴訟では、滞納の事実や金額を証拠に基づいて主張・立証する必要があります。なお、滞納額が60万円以下の場合は、少額訴訟の利用も考えられます。


 * 強制執行: 訴訟で得た判決や支払督促で得た仮執行宣言付支払督促の各正本に基づき、滞納者に対して強制執行の手続きをとります。


3. 区分所有法に基づく措置


区分所有法は、マンションの管理に関する基本的なルールを定めており、滞納者に対する措置も規定されています。


* 先取特権の実行(区分所有法第7条): 管理費等の債権には、区分所有者の専有部分等に対する先取特権が認められています。これにより、管理組合は、他の債権者に優先して滞納管理費の弁済を受けることができます。


* 競売請求(区分所有法第59条): 区分所有者が著しく不当な行為により共同生活の秩序を乱した場合、他の区分所有者等は、その区分所有権の競売を請求することができます。滞納額が多額で、かつ長期にわたる場合など、悪質なケースでは、競売請求も視野に入れることができます。請求には、前記2の法的措置や区分所有法7条に基づく先取特権の実行では解決困難な事情が必要です。


* 専有部分の使用禁止請求(区分所有法第57条): 区分所有者がその専有部分を法令又は規約に違反して使用した場合、他の区分所有者等は、その使用の停止等を請求することができます。


3. その他


* 弁護士への相談: 滞納問題が長期化・複雑化している場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士は、法的知識に基づいて適切なアドバイスを提供し、必要に応じて訴訟等の手続きを代理します。


* 管理規約の見直し: 管理規約に滞納者への対応に関する条項が十分に定められているか、定期的に見直すことが重要です。


注意点


* 滞納者への対応は、感情的にならず、冷静かつ慎重に行う必要があります。


* 各手続きには、費用や時間がかかることを考慮する必要があります。


* 弁護士に相談し、専門的なアドバイスを受けることをおすすめします。


まとめ


マンション管理費の滞納問題は、早期の対応が重要です。法的措置を適切に講じることで、滞納の解消を図り、マンションの健全な維持管理につなげることができます。

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