家賃滞納は、賃貸経営における悩ましい問題の一つです。滞納が長期化すると、家賃収入が途絶え、経営を圧迫するだけでなく、精神的な負担も大きくなります。このような状況に陥った場合、弁護士に依頼して法的措置を検討することは、問題解決のための有効な手段となります。
本稿では、家賃滞納が発生した場合の法的措置について、請求から執行までの手続きの流れ、期間、費用について解説します。
家賃滞納発生時の法的措置の流れ
請求(内容証明郵便)
まず、滞納者に対し、滞納家賃の支払いを求める内容証明郵便を送付します。内容証明郵便は、いつ、誰が、誰に、どのような内容の文書を送付したかを証明するもので、後々の証拠となります。
内容証明郵便には、滞納家賃の金額、支払期限、支払方法などを明記します。また、支払期限までに支払いがなされない場合は、法的措置を検討する旨を記載することで、滞納者に心理的なプレッシャーを与え、自主的な支払いを促す効果も期待できます。
訴訟提起(支払督促または訴訟)
内容証明郵便を送付しても滞納家賃の支払いがなされない場合は、裁判所に訴訟を提起します。
滞納家賃の金額が少額の場合は、支払督促という簡易的な手続きを利用することも可能です。支払督促は、裁判所に出頭する必要がなく、比較的短期間で手続きが完了するというメリットがあります。
滞納家賃の金額が高額な場合や、滞納者が支払督促に異議を申し立てた場合は、通常の訴訟手続きとなります。訴訟では、滞納家賃の金額や契約内容などを主張し、証拠を提出する必要があります。
判決・和解
訴訟の結果、裁判所が大家側の主張を認めれば、滞納者に対して滞納家賃の支払いを命じる判決が言い渡されます。
また、裁判の途中で、当事者間で和解が成立することもあります。和解では、滞納家賃の分割払いや、一部免除などが合意されることがあります。
強制執行
判決や和解が成立しても、滞納者が自主的に支払わない場合は、強制執行を申し立てることができます。
強制執行では、裁判所の執行官が滞納者の財産(預金、給与、動産など)を差し押さえ、競売などで換価して滞納家賃に充当します。
また、賃貸物件の明け渡しを求める場合は、明け渡しの強制執行を申し立てます。
手続きにかかる期間
内容証明郵便の送付:数日
支払督促:1ヶ月~2ヶ月
訴訟:3ヶ月~半年
強制執行:1ヶ月~数ヶ月
上記の期間はあくまで目安であり、事案の内容や裁判所の混雑状況によって変動します。
手続きにかかる費用
1. 訴訟費用
印紙代:
訴訟を提起する際に、裁判所に納める費用です。訴額(請求する金額)によって変動します。
例えば、訴額が100万円の場合、印紙代は1万円です。
予納郵券(郵便切手代):
裁判所から当事者への書類送付に使用される郵便切手代です。裁判所によって金額が異なりますが、数千円程度です。
2. 強制執行費用
執行予納金:
強制執行を申し立てる際に、裁判所に納める費用です。
物件の明け渡しの場合、一般的に10万円~20万円程度を見込んでおく必要があります。
執行官の手数料や旅費などに使用されます。
鍵業者・引越し業者費用:
物件の明け渡しの場合、鍵の交換や家財の搬出が必要になります。これらの業者に支払う費用も、執行費用に含まれます。
家財の量や、トラックの大きさで金額が変動します。
ワンルームマンションから戸建てまで様々で20万円〜100万円程度を見込んでおく必要があります。
その他費用:
執行に必要なその他の費用(例えば、倉庫代など)も発生する場合があります。
3. 弁護士費用
弁護士費用は、弁護士や事案の内容によって異なりますが、一般的には以下の費用がかかります。
相談料:1時間5,000円~1万円
着手金:滞納家賃の金額の5%~10%
報酬金:回収できた金額の10%~20%
その他、印紙代や郵便代などの実費がかかります。また、物件の明け渡しについては別途弁護士費用がかかります。
弁護士に依頼する際には、事前に費用について確認しておくことが重要です。
まとめ
家賃滞納問題は、早期に対応することで、被害を最小限に抑えることができます。滞納が長期化する前に、弁護士に相談し、適切な法的措置を検討することをおすすめします。
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