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退職金規程の不利益変更は有効?弁護士が争点と対処法を解説

執筆者の写真: 弁護士 石塚 誠弁護士 石塚 誠

会社の業績悪化や制度の見直しなどを理由に、退職金規程が従業員にとって不利益な内容に変更されることがあります。しかし、そのような不利益変更は、常に有効となるわけではありません。


今回は、退職金規程の不利益変更の有効性について、弁護士が争点と対処法を解説します。


退職金規程の不利益変更とは


退職金規程の不利益変更とは、退職金の支給額の減額、支給要件の厳格化、支給対象者の縮小など、従業員にとって不利となるような規程の変更を指します。


具体的には、以下のような変更が考えられます。


  • 退職金の計算方法の変更(基本給連動からポイント制への変更など)


  • 退職金の支給率の引き下げ


  • 退職金の支給に必要な勤続年数の延長


  • 早期退職優遇制度の廃止


  • 退職金の支給対象から一部の従業員を除外


退職金規程の不利益変更は有効?


退職金は、賃金の後払い的な性格を持つ重要な労働条件の一つです。そのため、退職金規程の不利益変更は、労働契約法上の「労働条件の不利益変更」に該当し、原則として従業員の同意がなければ無効となります。


ただし、例外的に、以下の要件を満たす場合には、従業員の同意がなくても有効となる可能性があります。


  • 変更後の就業規則を従業員に周知していた


  • 労働者の受ける不利益の程度


  • 変更の必要性の程度


  • 変更後の就業規則の内容の相当性


  • 労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであること。(労働契約法第10条)


これらの要件を満たすかどうかは、個別のケースによって判断されます。


無効な不利益変更に対する争い方


もし、不利益変更が無効であると考えられる場合は、以下のような方法で争うことが考えられます。


  • 会社との交渉:まずは、会社に対して、変更の無効を主張し、元の規程に戻すよう交渉します。


  • 労働組合への相談:労働組合に加入している場合は、労働組合を通じて会社と交渉する方法もあります。


  • 労働基準監督署への相談:労働基準監督署に相談し、助言や指導を求めることもできます。


  • 労働審判・訴訟:会社との交渉が決裂した場合は、労働審判や訴訟などの法的手段を検討します。


弁護士に相談するメリット


退職金規程の不利益変更に関する問題は、専門的な知識が必要となる複雑なケースが多くあります。弁護士に相談することで、以下のようなメリットが得られます。


  • 法的根拠に基づいた適切なアドバイス


  • 会社との交渉や法的手続きの代行


  • 証拠収集や書類作成のサポート


  • 個別の状況に合わせた最適な解決策の提案


退職金規程の不利益変更でお悩みの場合は、弁護士にご相談ください。


免責事項


本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを提供するものではありません。具体的な法的判断や行動については、弁護士にご相談ください。

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